アメリカ型役員報酬の是非(朝日新聞より)
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作成日時 : 2009/01/09 12:34
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20世紀初めから多くのビジネスリーダーを生み出してきた米国の経営大学院。その最高峰、ハーバード・ビジネススクール(HBS)のジェイ・ローシュ教授(76)が昨年11月下旬、米メディアのウェブサイト上での論争に火をつけた。同僚とともに、こんな意見を投じたのだ。
「ビジネス教育にかかわる者は自問しないといけない。会社がぼろぼろなのに経営者が何百万ドルを持って立ち去り、社会にツケをまわす風潮にどんな役割を果たしてきたのか、と」
「資本主義の士官学校」ともいわれるHBSの卒業生の4分の1は、危機の震源地となった金融界で働く。その一人、スタンレー・オニール氏(57)は07年10月、サブプライムローンを巡る巨額損失の責任を問われ、米大手投資銀行メリルリンチの最高経営責任者(CEO)を辞めた。手にした退職金は1億6千万ドル(約150億円)。会社は米大手銀バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)に買収された。
企業組織論の重鎮でもあるローシュ教授の「反省」には反論も相次いだ。「どんないい学校も、もともとグリード(強欲)な人は教育できない」「罪を犯した子供の母親を非難するようなものだ」
だが、ローシュ教授はいう。「今回の危機の要因のひとつは金融界の報酬制度だ。我々は資本主義がどのような仕組みで機能しているのか、考えないといけない」
昨年9月に経営破綻(はたん)し、世界を危機に突き落とした投資銀行リーマン・ブラザーズ。その経営暴走の理由について、バンカメのケネス・ルイスCEO(61)は「グリードもあった」と指摘する。
リーマンのCEOリチャード・ファルド氏(62)は在任中の00年以降、3億5千万ドル(約330億円)もの報酬を受けとっていた。純利益42億ドル(07年度)という高収益がそれを正当化していた。
だが、実態は、見返りも大きいが焦げ付くリスクも大きい証券化商品の運用による「荒稼ぎ」だった。金融危機で証券化商品市場は蒸発。甘いリスク管理が裏目に出て巨額の損に押しつぶされた。
企業幹部の交流団体、エグゼクティブ・カウンシルのロバート・ジョンストンCEO(39)は「投資銀行の経営者らは短期のお金を生み出すことに夢中になっていた」と突き放す。
◇
米国の高額報酬は、金融界に限らない。なぜ、そんな習わしが生まれたのか。
きっかけの一つは、80年代に米経済界に吹き荒れた企業合併・買収(M&A)の嵐だ。敵対的買収をはね返すには株価を上げるのが早道だ。経営者を株価の上昇に熱心にさせるにはどうしたらよいか。そこで登場したのが、あらかじめ決められた価格で自社株を購入できる権利(ストックオプション)を経営陣に与える手法だ。
この権利を持てば、株価が上がれば上がるほど大金を手にできる。経営に株価至上主義が広がり、右肩上がりの株式相場とともに、経営者の報酬もうなぎ登りになった。
経済のグローバル化も後押しした。国境を越えてビジネスを展開するCEOの責任は格段に重くなり、「高額」が容認されるようになった。
「厳しい出世競争に勝ち抜いた者、トーナメントの勝者は報われて当然。大リーグの選手のように高額でもいい、というわけだ」。企業統治に詳しいペンシルベニア大学のデービッド・スキール教授(47)はこう説明する。
米国では90年代半ばからは、幹部の一人ひとりの報酬内容が詳細に開示されるようになった。「社会の目を気にして報酬が下がったかといえば、逆に増えた。ライバル会社と比べて少なかったら上乗せするという、まさに競争原理が働いた」と米コンサルタント会社、タワーズペリンの阿部直彦駐日代表(47)は苦笑する。
「米国では報酬の多い少ないが、社会的認知度を測る重要な指標になっている。勲章みたいなものだ」。だから、CEOのトップ集団では、一生かけても使い切れない報酬がまかり通る。
対して日本。
「給料が安い」。05年にソニーの会長兼CEOに就いたハワード・ストリンガー氏(66)は、前任の出井伸之氏(71)から引き継ぎを打診されたとき、こう漏らしたという。ソニーの役員の07年度の平均報酬は約3億円。日本では最高クラスだが、米大企業なら驚く額ではない。
タワーズペリンによると、日本企業(売上高1兆円以上)のCEOの標準的な報酬はストックオプションなどを含めても1億3500万円にとどまる。
戦後の日本では、「高度成長のもとで企業が拡大し、事業の再構築の判断を迫られることもなかった」(一橋大学の米倉誠一郎教授)。「経営のプロ」は出にくく、報酬も抑えられてきた。
だが、その日本でも企業はバブル経済に踊り、90年代以降の長期不況では「サラリーマン社長」の決断力の弱さや、専門分野の「プロ」といえる人材の不足が問題視されてきた。報酬を抑えさえすれば経営がうまくいくともいえないようだ。
◇
危機を受けて、報酬のあり方の再検討も始まっている。
投資銀行より商業銀行に近くなった名門モルガン・スタンレーは昨年12月中旬、中堅クラス以上の社員の雇用契約に新しい項目を付け加えた。
「クローバック(回収)」条項。会社が社員のボーナスの一部を3年間預かり、その間に社員が手がけた取引で巨額な損失が発生したら、そのまま回収する仕組みだ。目先の利益拡大を追う経営を変えようという狙いだ。
経営悪化で60億スイスフラン(約5千億円)の公的支援を受けたスイスのUBSも、08年10月末にボーナスの大半を翌年以降に繰り延べる制度の導入を決めた。経営幹部が対象で、業績がいい年でも支払われるのはボーナスの3分の1まで。残りは将来業績が落ちた時のために蓄えられる。
欧州では政府レベルでの報酬見直しの動きが目立つ。
かつては米国流の競争一辺倒と一線を画してきた欧州では、グローバル化とともに米国型賃金が導入され、経営者の報酬は高騰した。
典型例は、98年に米クライスラーと合併したドイツ自動車大手のダイムラー。フンボルト大学のシュバルバッハ教授によれば、97年の経営幹部の平均報酬は従業員平均の21倍だった。それが98年には42倍、07年には52倍になった。
独政府は、経営者のストックオプションの行使期間を2年から3年以上に引き延ばす法案を模索している。
フランスでは幹部が解雇された際に受け取る退職金について、サルコジ大統領が法規制に踏み切る構えをみせている。もとは失業手当のない幹部を保護する制度だった。新興企業ブームのなかで幹部の引き抜き防止に利用され、金額がつり上がった。エアバスなど航空・宇宙関連を傘下に持つEADS社のフォルジャール社長は業績不振で退任したが、850万ユーロ(約11億円)の退職金を受け取り、問題視されていた。
ただ、シュバルバッハ教授は「上限を規制する法律は意味がない。優秀な経営者ならばいくら稼いでもいい」と指摘し、経営者報酬の上昇率と同じ上昇率を従業員の賃金にも適用するようなシステムの導入を提唱する。
市場メカニズムが社会を進歩させるとの考えが基本の米国では、「経営者に『欲を捨てて高潔になれ』といっても解決策にならない。業績と正確に連動する報奨制度にすることが必要だ」(経済ジャーナリストのリチャード・カッツ氏)との声が少なくない。
ただ、細かな制度の工夫だけで解決しきれるのか、との疑問は残る。
01年に明らかになった米エネルギー大手エンロンの巨額の不正会計事件も、経営陣が高額報酬を求めて株価をつり上げようとして起きたと指摘された。事件を受け、社外取締役の役割強化など経営監視の仕組みは強められたはずだった。だが、「取締役会は仲間内のグループのまま。結局、何も変わらなかった」(スキール教授)。今度こそ、教訓を生かせるのだろうか。(織田一、金井和之、斎藤徳彦)
(朝日新聞より)
企業とは何なのか、会社の持ち主とは、労働とは何なのかを真剣に考える時だ。
雇用情勢が悪化をたどるであろう2009年の冒頭にふさわしい(朝日新聞の)連載になるのではないか。
2000年頃にも話題になっていたと記憶している。
日本においてもライブドアの問題やその後、投資会社の村上氏など色々なことが経済問題として出てきていた。
日本の役員賞与に関しては、アメリカほどではないにしても最近、高騰しているのもまた事実だと思う。
では、経営者は高い給料を貰ってはいけないのかという問いには、そんなことはないはずだと言う声が上がるのだと思う。
だが、アメリカの様な経営者のあり方が正しいのかと言えば、最近のGMやクライスラー、リーマンブラザースを見るまでもなく、正しいといえる人は少ないはずだ。
また、会社は誰のものなのかと言う問いには前にも書いたが、会社法は少なくとも会社は株主のものだと規定している。
だが、株主に生産性があるかと言えばそうではない。
そこには、労働者(従業員)の生産性が働き、収益を上げる源になっている。
もちろん、株主が出資金を提供し、経営者が全体を見回し資本を投下し、従業員たちがそこに生産性を与えることにより収益たる果実を実らせることができる。(もちろん、その他にも色々なファクターは必要だが・・・。)
その果実たる利益をその三者でどう配分することが一番大切な問題になる。
優秀な経営者は非常に大切だと思う。
だが、経営者だけでも、労働者だけでも、資本家(株主)だけでもこうした果実は採ることはできない。
どう配分するのかは自明だ思うのだが、世の中そううまくはいっていない。
基本に立ち返り、もう一度考えるべき時が来ているのだと思う。
追伸、私は会計基準の再度の見直しが必要なのだと思う。
特に時価会計主義は見直すべきだ。
他にも、ストックオプションの見直しは絶対に必要だとおもう。
できるなら、ストックオプション制度を違法としても良いくらいだと思う。
合理的な報酬制度かもしれないが、結果的にはこの制度が経営者の目標を短期的利益の追求を促し、エンロン事件を見るまでもなく、巨額の不正事件の温床になるからだ。
必ずしもアメリカンスタンダードが国際基準ではないということを今回の世界同時不況が教えてくれている。
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